C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)療法の変遷と最近の経口抗ウイルス療法

 C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)療法は表1のように保険適用の変遷があり、現在では肝硬変を除くC型慢性肝炎に幅広く使用されている。ペグイントロンは単独での使用は不可であり、リバビリン(商品名レベトール)との併用療法が原則である。表2表3のようにグループ1・高ウイルス量では48週間、グループ2・高ウイルス量では24週間の投与を行う。効果の判定は投与終了後6ヶ月まで肝機能とともにHCVRNA(同定)検査を行い、表4の上段のように投与終了6ヶ月間持続陰性が確認されれば治癒したと判断する。さらに最近表5のようにウイルスの低下する程度や陰性化の時期により、48週間投与したとしても治癒しない条件が明かにされ、完治を目指す場合には投与の中止の指診となっている。

IFNα-2a(ペガシス)あるいはIFNα-2b(ペグイントロン)をポリエチレングリコールで化学的修飾(PEG化)することにより、血中薬物消失時間を延長させ、週1回投与により、持続的な抗ウイルス作用を示す。患者様には週1回の投与で医療機関への受診回数が少なくなり便利になっている。表6のようにペグイントロンのほうがペガシスよりも半減期が短く、体内への蓄積が少ない利点がある。平成18年6月現在、ペガシスはリバビリンとの併用は認められておらず(治験中)、ペグイントロンのみがリバビリンとの併用療法が可能である。表7のようにペグイントロン週1回投与により血中にインターフェロンが持続的に検出される。一方従来型のインターフェロンであるイントロン投与では48時間で消失するため週3回投与が必要なのが理解できる。ペグイントロンは体重に応じて1.5μg/Kg体重で量を加減することが必要である。
 グループ2・低ウイルス量のC型慢性肝炎例では、ペグイントロンとリバビリンの併用療法の保険適用は認められておらず、従来型のインターフェロンの24週間単独投与あるいはペガシスの投与でも表9のごとく約90%が著効を示し、IFN単独療法でも十分満足する結果が得られている。表10に典型例を示す。

一方グループ1・高ウイルス量のC型慢性肝炎では、表11のように治療法の変遷により著効率が向上し、ペグイントロンまたはペガシス+リバビリンの併用療法を48週間行うことにより(表12)、約50%が治癒する、表13に典型例を示す。IFNあるいはリバビリンの減量により著効率が低下するが、中止により激減することから、減量したとしても継続投与することが重要である。表15に示すように、HCVRNAが陰性化する時期により48週間投与での著効率に差があることが明かであり、4週投与の時点で陰性化すればほぼ全例、12週間以内で陰性化すれば70%以上の確率で治癒する。平成22年よりHCVRNA陰性化が12週以降で陰性化する場合には72週間の併用療法が望ましい。平成23年末よりペグイントロン+リバビリン+テラプレビル24週間投与が保険適用され、80%以上の著効率をしめす。しかしながらこの3者併用療法にて皮膚障害や腎障害による中止例も多くみとめており、平成2510月に保険適用され、副作用の少ないシメプレビルがテラプレビルに変わって使用されるようになった。著効となるのは体質をあらわすIL28β遺伝子多型TT型であれば、90%以上の著効が期待され、高齢者のC型慢性肝炎患者にも広く治療されている。Non-TT型でも75%が著効する。BMLSRLにて自費で検査可能であり、治療前での検査を薦めている。平成27年10月、アスナレビルとダクラタスビル経口2剤の内服治療が保険適用され、インターフェロン無反応例やインターフェロンが使用できないC型肝炎例でも85%以上の著効が期待できる。投与前にNS5AのY93変異を外注業者で測定することが重要である。さらにソフォスブビルとレディパスビル経口2剤(ハーボニー)の12週間内服により95%以上の著効が報告され、我が国でも平成27年8月下旬に保険適用された。 グループ2・高ウイルス量のC型慢性肝炎では、ペグイントロン+リバビリン併用療法24週間投与により約90%が著効することが明かであり、200512月から保険適用されている(表16)。HCVRNA陰性化が12週以降例では36週間の延長投与を考慮する。さらに、グループ2、低・高ウイルスの慢性肝炎と代償性肝硬変例でソフォスブビルとリバビリンの経口2剤の内服12週間で95%以上の著効が認められ、平成27年5月には保険適用され今後は第一選択となる。なお低ウイルス量でも本内服療法は可能となった。

 ASTALTが正常で経過するC型慢性肝炎では、2006年からは、表17に準じて血小板数と年齢を加味して積極的に治療を行うことが勧められている。

 2005年4月より従来型の週3回投与を必要とするインターフェロン(イントロンA、スミフェロンなど)には自己注射が認められ、患者様の負担が軽減した。特に表18のように朝と夜のIFNの投与により副腎皮質ホルモンの分泌動態に著しい差が報告され、夜間投与により、インターフェロンによる副作用の発現頻度が低くなることが明かとなっている(表19)。ペグイントロン、ペガシスを除くインターフェロン製剤の夜間の自己注射が可能となり、リバビリンによる薬疹出現例、糖尿病や高血圧合併例あるいは貧血が合併するような例では、表20のようにインターフェロン単独長期投与を行う例も増加している。特に完治を期待できない例では表21のようにインターフェロン長期投与による肝癌合併の予防を期待して投与することも多い。さらにペガシス低容量月2回皮下注での肝機能改善により肝癌合併予防も患者様の負担が少なく繁用されている。

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