1.肝臓病の原因
わが国における肝臓病の原因としては、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)によるウイルス性が多いとされている。事実、HCVの発見以来、我国における肝硬変の原因をみるとウイルスによるものが85%を占めており、アルコール性肝硬変は15%にすぎない。一方、アメリカではこれが逆転しアルコール性80%、ウイルス性20%になっている。しかしこの割合は肝硬変に限った数字であり、検診での肝機能異常を示す原因となると現状は全く異なる。ある会社での2,382名の検診の成績では、167名(7%)がGOT、GPT、γ-GTPのいずれかの異常が認められ、その原因としてはアルコールと肥満によるものが80%を占め、ウイルスによる肝機能異常は15%に過ぎない。このように軽度の肝機能異常を示す原因としては、アルコール、肥満、ウイルスの順であり、肝硬変のような重い肝臓病ではウイルス、アルコールの順に多いのが現状である。また薬剤も肝障害を起こす原因としてあげられるが、ほとんどが急性で一過性の肝障害であり、起因薬剤を中止すれば速やかに改善する。
2.肝臓病の種類
肝臓病の種類としては、原因による分類と病気の経過での分類がある。前者は、ウイルス性肝炎(A型、B型、C型、D型、E型)、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、肥満にともなう肝障害(大半が脂肪肝)、自己免疫性肝炎、先天性肝疾患などがある。後者では、ウイルスによる肝炎について、発病後6ヶ月以内に治癒する急性肝炎、急性肝炎の一部に進展する劇症肝炎、6ヶ月以上にわたって経過が長引く慢性肝炎、さらに肝硬変、肝癌に分けられる。慢性肝炎とは一般的にはウイルス性を意味し、アルコールによる肝障害については慢性肝炎と言わず、アルコール性肝障害といい、病型として脂肪肝、肝線維症、アルコール性肝炎、肝硬変があげられる(下図)。ウイルス性肝炎のなかで、慢性化を呈するものは、C型とB型のみであり、ウイルス性慢性肝炎、肝硬変といえばB型とC型と考えてさしつかえない(未知の非B非C型ウイルスによるもの存在があるとの報告があるが、あっても極めて頻度的には低いと考えられている)。