肝臓病の症状

肝臓病の症状
急性肝炎やアルコール性肝炎では自覚症状を訴えるが、慢性肝疾患では自覚症状に乏しいことがほとんどである。しかしながら「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓でも、でにくい症状のなかでも、黄疸を除けば、肝臓病に特徴的な症状はなく、働きすぎや胃腸病などのときにみられる食欲不振、嘔気、倦怠感、易疲労感などの症状のため、肝臓病のためとは気づかないことも少なくない。以下に肝臓病になると出現する可能性のある症状について記す。

①食欲不振、嘔気、易疲労感
肝臓病の自覚症状として、最もしばしば訴える症状である。とくに急性肝炎の発病初期には高率に認められる。しかし肝炎がまだ治っていないにもかかわらず、発病後1週間もすると不思議にこれらの自覚症状はなくなり、食欲も急に回復してくるのが一般的である。一方、慢性肝炎ではほとんど自覚症状がなく、あっても倦怠感を訴える程度で、食欲もあり、嘔気もないのがほとんどである。肝硬変になると、門脈圧亢進のため血流が悪くなり、胃や腸にうっ血が強くなるため、腸内にガスがたまりやすくなり、またガスの吸収も妨げられて腹部膨満感を訴えることもある。

②黄疸、灰白色便
黄疸は、黄色い胆汁色素であるビリルビンが血液中に増えるために眼球結膜や皮膚が黄染する状態である。よく手のひらや足の裏だけが黄色くなって、肝臓が悪いのではないかとの心配で外来を訪れる人がいるが、これはミカンの食べ過ぎでカロチンのために黄色くなる柑皮症と呼ばれるもので、この場合には眼球結膜には黄染を認めないことで簡単に区別が可能である。健常人でも血液中にビリルビンは存在するが(0.8mg/dl以下)、2mg/dl以上になると眼球結膜と皮膚に黄染を認める。またビリルビンの胆汁中への排泄が低下するため、便の黄色みが薄くなり、ひどいときには灰白色便を呈する。さらに血液中で増えたビリルビンが尿へ漏れ出てくるためにビール瓶のような濃い褐色尿を呈す。黄疸がでる肝臓病は急性肝炎や進行した肝硬変、肝癌があげられるが、黄疸があっても肝臓が悪くない場合もある。これは血液が壊されるために起こる溶血性黄疸と呼ばれるもので、貧血の一種である。また生まれつきビリルビンの肝細胞へのとりこみや、肝細胞に取り込まれたビリルビンを抱合することができない「体質性黄疸」がある。

2023年04月03日